「遺影」

祖母の家に、私の亡父の遺影が飾ってありました。

その遺影を、私の元へ返して欲しいと、従兄弟にお願いしていました。

従兄弟は、大阪に住んではるのですが、わざわざに京都の下鴨まで帰って、遺影を取りに行き、忙しくしたはるのに、仕事中抜け出して、私に手渡してくれはりました。

「郵送しよかとも思たんやけどなぁ、なんやかわいそうでなぁ」と従兄弟は笑い、すぐに仕事に戻らはりました。

その遺影を飾るのもなんかなぁ・・・ということで、私の身長くらいあるたんすの上に置いてある箱と箱で挟んで、こっそりと置いてあります。


亡父は、いつもカメラを持ち、親族が集まる時には撮影係ばかりしていたので、写真が全く残っていません。

弟が亡くなった後、父が
「お姉ちゃん、ワシのお見合い写真、見てぇな」と差し出したのは、写真館で撮った、背広を着て、きれいにちゃんと散髪をして、ヒゲもきれいに揃えてある、他所行きの父が、そこには写っていました。

「ワシな、ほんまに写真ないやろ?それ、遺影にしてぇな」というので、私は
「そんなん、もっと年いってからのが必要やのに、こんな若い写真なんか、使えへんやん」と言ったのですが、父は
「いつ何時・・・なぁ」と呟いていました。

弟が亡くなった時に困ったのは、遺影にする写真がないことでした。

それで、父は、私と母に何も言わずに、わざわざ写真館で写真を撮っていたのでした。

それから3ヶ月もしない間に、父は亡くなってしまい、結局父の言っていた通り、他所行きの父が写っている写真を遺影にしました。


その写真が、今、我が家にあるのですが、私の背では見えませんが、たかしからは見えるそうで。

「かあちゃん、またじぃじと目が合うた」
「見守ってくれたはるんやん」
「でもな、どの角度から見ても、目が合うねん」
「ふ〜ん」
「なんか怖い〜」
「心にやましいことがあるさかいに、怖く感じるんえ」
「勉強してへんこととか?」
「そう。ちゃんとせい!て、いうたはるねん」
「そやけど、ほんまに怖いねんけど・・・」
「亡くなる日のお昼に、ワシの夢は、孫抱くことですねんて言うたはったくらいやさかいに、絶対に見守ってはるわ」
「そうかなぁ・・・」

私の中での亡父は、ランニングシャツと短パンのイメージしかないので、この背広を着ている父は、やっぱり他所行きなので、なんかどうも感情が湧いてきません。

どこか違うおじさんの、写真みたいで。

でも、たかしのことを見守ってくれていることだけは、本当だと思います。

お父さん、ビスコが好きやったなぁ・・・。
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by marurin373 | 2015-09-13 11:58 | 思うこととかなど | Trackback | Comments(0)