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平成3年1月1日

先日、小さなVHSのテープを見つけました。

そのテープのケースには、私の字で「永久保存版」と書かれており、また、亡弟が描いた「どらえもん」が描かれていました。

一度は見たこともあるのですが、そのテープをDVDにしてもらいました。

カビも生えていたそうで、別に1080円もかかりましたが、31分の映像が、DVDで蘇りました。

たかしと観ていたのですが、そこには25才の私と、21才の亡弟と、そして今の私と同じ年の両親が写っていました。

たかしに「かあちゃん、細かってんな」と言われ、本当に恥ずかしい思いをしました。

そうそう、あの頃は、ウエストが55センチしかなくて、ジーンズも26インチだったと思い出しました。

猫の耳のような「耳」がついた赤いニットの帽子を被り、赤と黄と緑のボーダーのトレーナーを着て、上着はブランド物のブルゾンで、細いジーンズを履いています。

その姿を見て、たかしに「細いだけで、今の趣味やらセンスが、全く昔と変わってない」と言われ、私はただ「そら、人間、そう変わるもんちゃうもん」としか答えられませんでした。

亡父が撮っている時は、亡母と亡弟と私が、そして亡弟が撮っている時は、亡父が写っています。


元旦は、午前中に4人で、梅干しと結んだお昆布が入ったお湯呑みにお茶を入れて「お祝いやす」と言うお祝いをして、白味噌のお雑煮を食べて、それから父方のお墓参りをして、次に母方のお墓参りをして、最後に母方の実家に行く・・・というのが、毎年恒例となっていました。

父方のお墓のある本能寺に行くところから写っていました。

まだ分家である我が家のお墓は、砂利がひいてあるだけで、お墓は建っていませんでした。

私と亡弟は、その「砂利」に向かって手を合わせて「お父さん〜」とか言い、笑い、亡父が「ワシはまだ生きとる!」という小芝居をするのも、お約束です。

父方のお婆ちゃんも写っていて、よく怒られたけれど、今観てみると、きれいなお婆さんやなぁと思います。

お墓の後は本堂にお詣りです。
ま、初詣です。

そこで、思い出したことがありました。

お婆ちゃんが、私にもお年玉をくれはったんですが、亡父が「おねぇも、もろたんか」と言っているのです。

そうや。

私、お父さんに「おねぇ」て呼ばれてたんやった。

弟が亡くなってから、亡父は決して「おねぇ」と呼ばなくなってしまったので、忘れていました。

昨今「おねぇ」と呼ばれる方達がいてはりますが、その頃はそんな呼び名はありませんでした。

次に、亡父の運転で母方のお墓参りの為に「清浄華院」に行き、一通り済ますと、母方の実家に行ってます。

河原町通を走っているのですが、河原町の今出川の角にあったパチンコ屋さんを「あそこ、ワシの銀行やねん。たんとお金貯めてるねん」と言っている様子が写っています。

鴨川の横を上に上がって、私が大好きやったお婆ちゃんの家に。

その道中、何故か私は、ずーっとくしゃみが止まらないようで、写っていませんが、私がくしゃみをしている声が、もうずーっと聞こえていました。


亡母の実家は、お婆ちゃんと、お婆ちゃんの妹夫妻も一緒に暮らしていたので、亡母の従姉妹も家族で来たはります。

私は、お婆ちゃんちで、何かをずーっと食べっ放しです。

横では亡弟が、多分、お婆ちゃんちで、初めてタバコを吸ったようで、お婆ちゃんが録画している亡母の従姉妹に「ちょっと、この子がタバコ吸うてるとこ、撮ってやって」という声が入っていました。

従姉妹には「タバコの煙が目に沁みるやろ!」と突っ込まれ、鼻から煙を出したり、爪楊枝の先をテーブルに押し付けて丸くしてから、鼻と唇で挟んでみたり、本当にひょうきんな姿が写っていました。


「かあちゃんと、わーくんて、ずっと一緒にいてるな」
「そうやな」
「ずっと2人でしゃべってるな」
「そうやな」
「ほんまに、仲良かってんな」
「そうやな」
「わーくんて、面白い人やってんな」
「そうやな」

私は、もう、たかしの言葉に「そうやな」としか、答えられませんでした。

「みぃんな、死なはってんな」
「そうやな」
「ばぁばも、じぃじも、お婆ちゃんも、わーくんも、みぃんな死なはってんな」
「そうやな」
「・・・泣きそう?」
「いや、もうただ、懐かしいだけやわ」
「よかった〜」
「なんで?」
「こんなDVD見たら、かあちゃん絶対に泣くなと思ててん」
「もう泣き尽くしたわ」
「うん、ほな、よかったわ」

「この家な、最後は、ばぁばが住んではったし、たかしも行ったことあるやろ?」
「えっ? ほんま?」
「もう、忘れたか?」
「なんか感じが違うし、わからんかった」
「そうか」
「今、その家、どうなってるん?」
「もう潰して、新しい家が建ってて、新しい人が住んではるんやって」
「ばぁばが死んだ家やろ?」
「そやし、大家さんが建て直さはったんちゃうか?」
「・・・言うたら悪いけど、縁起悪いもんな」
「まぁな」

たかしが私に気を遣っているのが、ひしひしと伝わってきます。

なので、泣かずに観ようと覚悟を決めて、たかしと観たのです。

ほんまに仲のいい姉弟なら、何故、気付かなかったのか。

いくら考えても答えは出ないし、前に進もうと思って、亡弟よりも、たかしのことだけを考えて、生活していこうと決めたので、もう泣くことはありませんでした。


亡父の後ろ姿を見て、つくづく思ったことがあります。

亡父はかなり太ってはいますが、肩幅の感じが、たかしがそっくりなのです。

元オットは、すごい「なで肩」でした。

しかし、たかしは「なで肩」ではなくて「いかり肩」なのです。

肩の感じが、亡父と、たかしがあまりにも似ているので、驚きました。


また1人でゆっくり観てみようと思います。

泣くかも知れへんけど。
by marurin373 | 2015-10-28 00:37 | 思うこととかなど | Trackback | Comments(0)