人気ブログランキング | 話題のタグを見る

たかしの様子

あの日から、私は私の事しか考えられませんでした。

気を付けていたことと言えば、なるべくたかしの前では泣かない事と母を責めない事だけ。

頭がぼーっとして、本当に○ちゃんは存在していたのか、長い長い夢を見ていたのではないかと思う時もあります。

今日は、友達のお家に寄せてもらう約束の日でした。

帰洛するずっと前からの約束で、たかしが本当に楽しみにしていた日です。

どうしよう。
ちゃんとできるかなぁ。

高校の時から友達やし、気心の知れた仲やし。
でも、話している時に泣いてしもたらどうしよう。

やっぱり止めようか。

とか考えていましたが、たかしが何度も「ホンマに、いく?」と聞いてくるので、思い切って遊びに行ってきました。

今日も五月晴れ。
暑いくらい。

たかしは、友達にたくさんたくさん遊んでもらい、アメリカンのバイクの後ろにも乗せてもらって、なかなか帰ろうとしませんでした。

私は友達の奥さん(奥さんは後輩)と、○ちゃんの事や裁判の話、たかしの事やなんかをずっと喋っていました。

ふと気が付くと、私は本当によく笑っていました。

たかしも嬉しそうでした。

家に帰ってから、遅い晩ご飯を食べて、お風呂に入りました。

「かあちゃん、いっぱい わろてたなぁ」
「まぁな」
「かあちゃんも、たのしかったん?」
「楽しかったよ」
「・・・よかった」

私は、この時、ちょっとショックを受けました。

そうや。
たかしも悲しいのに、たかしが泣いているところを見ていない。

いや、確かに泣いていたのに、ちゃんとそれを受け止めていなかった。

たかしが泣かないと思っていたけれど、私がちゃんとそれを見ていなかっただけや。

「ホンマはな、なきそうな とき、あってんけどな、みたら かあちゃんが ないてるしな、がまんしてん」

私は、たかしの事まで考えられなかった。
もう、自分の事で精一杯やった。

○ちゃんの前で、私が1人で泣いているのを、たかしはちゃんと見ていたんや。

「かあちゃん、もう こっちの おへや、おいで」と、何度も言われてたし、たかしは私が泣くから、泣くに泣けなかったんや。

私が感情的になって、たかしに「○ちゃんとは、もう2度と会えへんのえ!」と叫んだ時も、じっと私の目を見て、ただ頷いていました。

そして一言「もう わかってること、いわんといて」と言われました。

「絶対に、かあちゃんより先に死んだらあかん」と言った時、たかしは神妙に聞いていました。

「お約束、できるか?」
「おやくそく、する」
「絶対え」
「あのな、かあちゃんにも、おやくそく してほしいこと、あるねん」
「何を?」
「ぜったいに、おさけは のまんとって」
「わかった。絶対に、呑まへんよ」
「もし、かあちゃんが おさけのんだら、さきに しぬかもしれへんよ」
「先に死んだら、かあちゃん、お酒呑むよ」

この時、私達は真剣でした。

・・・どんな交換条件なんだか。

「もう、○ちゃんには会えへんのやなぁ」
「でもな、オレ、はっけんしてん」
「どんなこと?」
「おめめ つぶったら、すぐ ○ちゃんの おかお、うかぶこと」
「ほわほわをなでなでした感じは?」
「ちゃんと、おぼえてる」
「忘れへんの?」
「オレ、○ちゃんのこと、だいすきやし、ぜったいに わすれへんもん」
「そうか」
「じぃじと、わーくんと、ほんで ○ちゃんも、ぜったいに オレのこと、まもってくれてはるって、わかるもん」
「わかるんか?」
「あさ おきたときな、なんか よこに ○ちゃん ねてるかんじ、してたもん」
「そうか・・・」
「オレ、いつでも ○ちゃんのこと、おもいだせるもん」

いなくなってしまった事を悲しむばかりの私でしたが、たかしにまた教えてもらいました。

「オレなぁ・・・かあちゃんが なくとこみるの、ほんっまに イヤやねんな」
「うん」
「ないたらなー、ぜったい、○ちゃんも イヤやって、しってるもん」
「ほんで泣かへんの?」
「うん」
「我慢してるんか?」
「そら、かあちゃんも オレも ないたら、○ちゃん、もうイヤやって、まもってくれへんようになるって おもうもん」

「でもな、悲しい時は、泣いたらええんちがうか?」
「ん〜、さわれへんのは かなしいけど、いっつも そばに いてるって しってるしなぁー」

もしかしたら、たかしのほうが私よりもずっと大人なのかもしれません。
それに、ずっと強い。

「○ちゃん、タクシーで びょういんいくときな、オレ、ずっと おねがいしててん」
「何を?」
「しぃじとわーくんにな、もう○ちゃん、つれていかんとってーって、たのんでてん」
「そうやったんか」
「でもな、○ちゃんも、じぃじいとわーくんのとこ いかはったし、これからは、じぃじとわーくんが ○ちゃんの さんぽ しはるねん」
「してくれはるかなぁ」
「そやし、オレ、まいにち おねがいしてるねん」

私は、自分達の生活の事ばかり考えていましたが、たかしは○ちゃんの天国での散歩のことまで考えていました。

変なテンションでふざけていたのは、私を笑わす為。

自分も悲しいのに。

私が感情的になっていた為に、泣けなかったたかし。
また私はたかしに甘えていました。

たかしにも謝らなあかんなぁ。

たかしの方が、私よりも何でもよくわかっていました。
もう2度と会えない事。
永遠のお別れ、でもいつも傍にいてくれるようになった事。

私は「フランケン・ウィニー」の事まで思い出していたのにな。

私は、またたかしを無理矢理早く「大人」にしてしまいました。

土手で転げ回り、駄菓子を食べ、顔中泥だらけにしているたかし・・・。
本当に子供らしい子供。

でもやっぱり、たかしはパンツァーで、中には父が乗っているのかもしれません。

また戻ったら、2人でゆっくりと○ちゃんのことで覚えている事を話して、2人で乗り越えていきたいと思います。

またいつものかあちゃんに戻るしな。
そやし、もうちょっと、待っててな。
Commented by マリ at 2006-05-06 21:58 x
こんばんは。
コメントが遅くなってしまいました。記事は読んでいたのですが。

何って表現していいのか またわかりません。
もちろん悲しいと思いますが たかし君の言うとおりだなーとも思うので悲しいようで悲しくないようで。

あたしはまだ 誰一人大切な人を亡くしたコトがないので どういった心境になるのか 正直わかりません。

マリもいつものたかしくんのかぁちゃんに復活されることを待ってますね^-^
Commented by marurin373 at 2006-05-08 18:46
>マリさん
いや、もうホンマにめちゃくちゃ悲しいですよ〜。
人をなくすのとは、また違う悲しさというか。
(って、脅したりして)

たかしの言うことは、いちいち本当だなぁと思います。
子供やワンちゃんって、スゴいですね。

by marurin373 | 2006-05-05 03:27 | 息子(たかし) | Trackback | Comments(2)