人気ブログランキング | 話題のタグを見る

DVD

たかしの中で「じぃじと、わーくん」という人達についてのイメージは、一体どういう風になっているのか。

私の友達に会うと「わーくんて、どんな ひとやったん?」と訊くことがよくあるらしいのです。

じぃじも然り。

写真でしか会ったことがない人のことを思い遣ることができるたかしを、私は少し尊敬しています。

「五山の送り火」について、母がたかしに説明したはりました。

「お盆ていう時にな、じぃじとわーくんがな、お家に帰ってきはるんえ」
「きょうとに?」
「そやしな、お盆の時にな、お膳て言うてな、お仏壇にごちそうをお供えするねん」
「この おやさい、じぃじと わーくんが たべるん?」
「このお団子も食べはるんえ」
「たべて、ほんで また かえるん?」
「16日の、大文字の火を目印にしてな、帰らはるねん」
「だいもんじて、こうべの ほうに あるん?」
「? 京都え?」
「え? きょうとから、また オレのおうちに かえるんやろ?」
「俺のお家?」

たかしの中では、私の父と弟は、いつもたかしの傍にいることになっているらしいのです。
なので、お盆の時だけ家に帰って来て、また帰ると聞けば、自然と「オレのおうち」ということになるのです。

仏壇にも、お墓にもいなくて、いつも横にいてはる。

そう感じることができるたかしが、羨ましいです。

東京から帰洛していた弟の友達が、ビデオテープを持って帰ってきてくれはりました。
それをDVDにして、私とたかしにくれはりました。

弟と友達が20才の時のクリスマスの様子、父が作るすき焼きを食べる様子などが映っているらしいのです。

動いて話している弟を見るのは、もう10年振りです。

私は、このDVDを見て、自分が一体どんなリアクションをするのかが想像できませんでした。

泣くんやろうか。
いや、もう笑えるんやろうか。
もう何とも思わないんやろうか。

こちらに戻ってきて、早速たかしと一緒に見てみました。

懐かしい、どうしても忘れることができなかった弟が、そこに映っていました。

そやそや。
こんな顔やった。
こういう物言いしてたなぁ。
神経質そうな指先。
曲がった小指。
この笑い方。

弟の横に映っている友達さんは、今とはちょっと違う笑顔でしたが、弟はあの時のままです。

そこには、父も映っていました。

お酒を呑んでいる父。
酔っている時の話し方。
咳払い。
笑い方。

もう本当にいろいろな事を鮮明に思い出しました。

私が、父に抱いていた感情。
いろんな出来事。

このDVDには、23才の時の弟が「したい仕事」について話している姿も映っていました。

具体的に細かく、明確な目標。
夢が、絞られ過ぎているようにも思いました。

あぁ、だから、その通りにならなかった時の自分を許すことができなかったんかなぁ。

たかしは、自分の叔父にあたる私の弟よりも、このDVDをくれた友達のことばかり見たはりました。
まぁ、仕方のないことですが、実際に会って話したことのある人の「若かりし頃」の方が、面白いようでした。

弟の声を聞くのも、たかしにとっては初めて。
もちろん、動いている父も初めてです。

「思てた通りやった?」
「ちょっと ちごた」
「そうか」
「もっと へんなかお してるんかと おもてた」
「変な顔したはるやん」
「ちょっと かっこよかった」
「かあちゃんと似てるか?」
「にてへんかった」
「よう似てるて言われてたんやけどなぁ」
「はなのあなだけ、いっしょや」
「みんなこんな鼻の穴やん」
「じぃじも、わーくんも、かあちゃんも、オレも、みんな はなのあな でっかいな」
「そやなぁ」
「みんな いっしょや」

たかしは、この「鼻の穴」というキーワードで、親近感を感じたようです。

「なんかな、こえが、へん」
「どんな声したはる?」
「すっごい はなごえ」

確かに、ひどい鼻炎だった弟の声は、ひどい鼻声です。
いいとこ突くなぁ。

「なんか ちょっと かんどうした」
「感動?」
「ほんまもんに あいたかった」

見ると、たかしが泣いていました。

「いっしょに トイザらス いきたかった」
「うん」
「いてたら、はなのあな、でっかいなぁ〜て、つっこめたのに」
「うん」
「ほんでな、おまえに いわれとうないわ! て、つっこんでもらうねん」
「言いそうやなぁ」
「いっしょに ブロックで あそびたかった」
「そやなぁ」

それまで、アホな顔をしてふざけて映っている弟のことを笑っていた私でしたが、たかしの涙を見て、もう堪らなくなりました。

「でも、このDVDもろて、よかった」
「そやなぁ」
「こんど、ありがとうて、ちゃんと いうわ」
「言おな」

あと20年で、たかしが弟と同い年になります。

いや、その前に、あと15年で父と同い年になる私。

今もたかしの傍にいてくれてるんかなぁ。

・・・ちゃんと守ってや。


追記
弟の話の中で、「俺のねぇちゃんがな、」と話しているところがありました。
by marurin373 | 2006-08-20 04:36 | 思うこととかなど | Trackback | Comments(0)